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2000
 

 
 文房具・個人情報サイト「ステーショナリープログラム」
 ステーショナリープログラムではデザイン・機能の優れた文房具をテーマにしています。


■ 「クロスバー」リビュー
 
今回はボールペン替芯互換型スタイラス「クロスバー」のリビューをお伝えします。
 
ひごろステーショナリープログラムをご覧の皆様には本製品が信頼文具舗で販売
されていることをご存知のことと思います。それゆえ、当サイトで公正に評価する
状況が整うまでしばらくの間リビュー掲載を控えておりましたが、そろそろ販売の
ほうも落ち着いてきましたので本日ご紹介させていただきます。
 
まず、ここでもういちど「クロスバー」の概要をお伝えしましょう。
本品はペン入力型携帯端末に用いるスタイラス(入力ペン)です。
写真のとおり樹脂製のスティック状の製品です。
 stylus refil [ cRoss Bar ] OHNO-SYUNDO / JAPAN
 
この「クロスバー」は、それ単体では使用しません。
本品の寸法はCROSSブランドのボールペン・リフィル(=替芯)に合わせて作られ
ており、ボールペンの替芯を「クロスバー」に交換することでボールペンが入力ペ
ンに変身する仕組みになっております。
 
ところで、CROSSには純正品として「クロスバー」と同様のスタイラス替芯が存在
しており、米国ではすでに発売されております。
「クロスバー」を開発された大野さんは、CROSS本体の作りの良さや入力ペンとし
ての可能性を確信し、一方で米国から入手した純正スタイラスのタッチとご本人の
描く理想とのギャップを埋めることを原動力に、この「クロスバー」を製品化した
のではと推測されます。
 
さて、「クロスバー」を評価するには、「クロスバー」とCROSS本体それぞれの作
り、そしてこれらを装着した状態での仕上がりを順を追って見ることになります。
 
「クロスバー」はジュラコン樹脂(大野さんによる)という素材とのことで、スタ
イラスとしての強度を確保しつつ、指で曲げても折れない柔軟性を備えた樹脂です。
このほどよい硬度が入力の際の正確なタッチを実現し、同時に画面にキズを付けな
い優しさを両立しています。
先端の形状は「ちょっとトガり過ぎではないかな?」と一瞬不安を感じますが、目
を凝らすと精密に丸め加工が施されており、完成度の高さに納得するものです。
 
いっぽうCROSSはおなじみのブランド。いままで買わないまでも会社からの贈答品
や親戚のおみやげなどで皆さんの手元にも1本ころがっていたりすることでしょう。
CROSSの持ち味は軸を回転させてペン先を繰り出す機構にあると思います。ノック
式ボールペンでは得られないしっかり感、指先とペン先との一体感は、この回転式
の機構に深く関わりがあるようです。
ペン先のぶれが少ない筆記具は快適なものですが、ペン入力端末ではそれがさらに
重要なスペックとなってきます。CROSSの本体はその要求に応える素地を備えてい
ると思えます。
 
いよいよ「クロスバー」にCROSSを装着します。
装着にはいったんCROSSボールペン替芯の後端に取り付けられたキャップを外し
このキャップをクロスバーにはめ込む作業があり、純正キャップの寸法のばらつき
から、時に少々手間がかかります。キャップがきつい場合「クロスバー」をペンチ
に噛ませ力いっぱいキャップに押し込む必要があり、逆に緩い場合「クロスバー」
にセロハンテープを巻くなどの調整が必要で、唯一「スマートではない部分」です。
 
いったん装着すれば、フィッティングは最高です。
CROSSのしっかりしたタッチそのままに、快適なペン入力の世界が広がります。
私はハンドスプリング社の「バイザー」を使っていますが、この端末の文字認識
機能「グラフィティ」の入力作業もスムーズです。クロスバーを使う以前は文字
入力のほとんどはデスクトップ・コンピュータから行っていたものが、いまでは
バイザー上で書き入れる機会が多くなってきました。正直、「クロスバー」で初
めてグラフィティの良さに出会ったと言えます。
あ、具体的な表現が欠けていました。「クロスバー」の正確に追い込まれた先端
の細さが入力画面を正確にとらえ、また画面の上を滑らかに滑走します。
「クロスバー」ユーザーのおひとりからは、スタイラスの細さゆえに、人間の手
が無意識に加える力と、画面が要求する最適な圧力のバランスがとれているので
はと指摘されておられました。私も、なるほどまさにそのとおりと思いました。
 
 
ここでひとつ注意すべきことがあります。CROSSはその製品自体に永年保証が
うたわれております。けれども「クロスバー」装着状態でのトラブルに際しては
そのすばらしい保証が適用されないということです。実際にはCROSSのシンプル
な機構ゆえに、「クロスバー」を装着したことで問題の発生することはほとんど
無いと思います。ただ、メーカーの立場から見る保証というものは単に製品本体
の故障の範囲だけではない意味合いもありますから難しいところです。
「クロスバー」ユーザーの多くは、ペン先を「クロスバー」に交換する行いを
パソコンのキーボードやマウスを使いやすいものに買い替える感覚で捉えている
と思います。しかしCROSSにとっては筆記具の芯は製品の中心部であると考えて
いるはずで、ここを別のブランドの製品に取替えられてしまうのは心良いとは思
っていないでしょうね。私はそういうことをつい想像してしまい、悩みを抱えて
しまいます。できることならば、CROSS純正スタイラスが日本国内でも販売開始
され、ユーザーが選べる状況になったらいいなと思います。私も純正スタイラス
を実際に試してみたいです。
 
 
(最後に)私は大野さんがCROSSに着眼した事に敬意を払わずにはいられません。
私自身、「クロスバー」によりCROSS本体の持つ良さを再認識したのですから。
 
大野さんの「クロスバー」サイト:掌極道(パームごくどう)は → こちら


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