2003年7月14日
■ ISOT 2003 ・ SPRG的レポート


7月3日〜5日の計3日間開催のISOT(第14回 国際 文具・紙製品展)。

今年も初日と最終日(=一般公開日)の2日に分けて行ってきました。
その中で印象のあったところをピックアップして書いてみたいと思います。
とは言え、今年は会場内で多くの人とお話をするのが主になってしまい
結果的に会場の全体を広く見ることはできませんでした。
ですので、ここに書かれていないからと言って印象に無かったというわけ
ではありません。たまたま歩いたルートが違っていただけです。

(表現の便宜上、社名の敬称は略しています。)

1.コクヨが無い

最初にまず何を書いたらよいのか、と言いますか、非営利のサイトだから
こそハッキリ言ってしまえば、一番印象的だったのは「コクヨ」のブース
が無かった(!)ことでしょう。
ほんとうに無かったのかなあ、いまでも信じられません。

私はたまたまお客様をご案内していて、
「じゃ、まず手始めにコクヨさんに行ってみましょう」
なんて会場のパンフレットを探したら、無い無い、、「えっ?」

コクヨの無いISOT、ご飯の無い松花堂弁当みたいで、寂しいものです。
周りがにぎやかでも、ご飯が無いとお弁当になりません。

その理由を直接調べずしてあれこれ想像するのは私の本意ではないので
ブースが無かった事実だけをいま語っているのですが、コクヨが無い
というだけで、たとえばISOTって何だろう、だれのための集まり
なんだろうと、次々にいろいろな思いが発生してしまうのでした。

たとえていいのか、東京モーターショーにトヨタが出なかったら、、ねえ。
「今年はワケあって出展しませんでした!」って済む所と済まないトコロ
があるような気はしました、いかがでしょうか? しょうじき寂しいです。
(これを書くのってタブーなことなのかなあ?)

2.クオバディスジャパン

いつもお世話になっております。
昨年と同様、製品の全体像がわかりやすくディスプレイされていました。
前面にさりげなく置かれているのがクオバディスジャパン10周年記念
モデルです。あれこれ工夫が凝らされた期待のこちらは、すみません
公式のプレスリリースをお待ちしましょう。
クオバディス・アジェンダ・プランニング・ダイアリーのの通常モデルは
例年どおりのフルラインナップ態勢。
2004年版のカタログをいただきましたので、詳細は機会を見て。

クレールフォンテーヌのノートについて、一部の情報誌に掲載されて
いたらしい、「モザイ柄のノートが無くなる」という噂については
半分本当のようです。
突然廃番になるわけではなく、長い時間をかけて少しずつ新しい柄
に移行するらしいです。紙の原材料に由来するクレールフォンテーヌ
のオリジナルデザインはやがて無くなってゆくのですね。
クラシックなパターンに鮮烈なレッドやパープルのカラーがおとな
向けの感じで好きなので、欲しいノートは確保しておこうと思います。

そのほか、万年筆インク(フレグランス入り!)、グレードの高い
レターセットなどフランスからの新しいプロダクトが展示されていました。

3.ぺんてる

ずいぶんと広いブースでした。普及価格帯の筆記具を取りそろえ、多くの
来訪者がゆっくり製品を試せる態勢が整っています。筆記具を手に
取ってもすぐに話しかけられることはなく、さんざん試した最後に声を
かけてくれるなど、コミュニケーションのタイミングが気持ちの良いもの
でした。
印象的だったのはニードルチップタイプの赤黒ボールペン(ゲルインク?)
+シャープペンを装備した普及価格帯の多機能ペン。ボディは柔らかな
カラーの樹脂製です。ボールペンインクはきわめて滑らかで、しかも
筆記後瞬間にインクが乾燥するというもの。たしか秋口に発売が開始
されるようです。

4.セーラー

高価格帯の筆記具を力強く展示しているのが印象的でした。
グレードの高い筆記具を大切にしてゆくべきと思う私としては今後注目
のところと思います。残念ながら、最終日ISOTの終了時間になってしまい
メーカーのかたとお話ができませんでした。

5.トンボ鉛筆

セーラーと同様、筆記具のメーカーとして見逃せない展示がありました。
ブース中央に据えられた高価格帯筆記具群です。
トンボと言うと鉛筆、消しゴム「MONO」、あるいは修正テープ&テープのり
の会社と考えていましたが、じつは長いあいだにわたり欧州への高価格
筆記具の輸出を積極的に行っており、TOMBOWの評価は現地において
ラミーなどと並んで高いとのことです。

6.ミドリ

昨年のISOTでフレンドリーな展示ブースを展開したミドリは、ことしも
その方式を踏襲。つまり、すべての商品を低いテーブルに並べ、すぐに
手に取って確かめる「フリーマーケット」(?)方式。
でも今回はかなりの盛況で、展示されている製品に近づく
のがけっこう大変でした。人の背中ばかりを見ていた感じです。

製品については「文房具」から「雑貨」の間を
広くまんべんまくラインナップする姿勢はいつものとおりのようです。
日本の文房具市場が「お子様チック」なので、なかなか難しいところも
有ると思いますが、今後、大人がながくつかえるしっかりしたもの、
キワモノでないものをもっともっと増やして、良いユーザーを育てる!
くらいの方向を出してほしいな、と勝手ながら思っています。
ミドリだからこそ、期待しちゃうんです。

7.極東ノート

いま極東と言えば、やはりFOB COOPシリーズのワイヤーバウンドノート
が光っています。初代のがっしりしたモデルの変わらぬ良さに魅かれます。
今回はスリムで軽量なモデルも出ていました。やはり市場の要求(?)
なのでしょうか。
ノートを手に取りやすい高さ&距離に展示しているのはとても良いことです。

8.マルマン

素材感あふれる布製カバーのダイアリーが出ていました。
ダイアリーって季節物なので販売は大変そうだなあと、いつも思います。
中の紙質が良いのがマルマンの美点です。

あと、ちょっと変則サイズで小型の2穴バインダーが出ていました。
写真アルバムやノートを綴じるようです。カバー色は多彩。
いままであれだけ主流だった26穴システムがひっそり奥に展示され
新しいフォーマットのバインダーを登場させるのは、まったくゼロから
始めるわけですから、これまた大変なことだと思います。

画材(水彩用紙)で有名な「canson」のインクジェット対応A4用紙
がとても気になりました。cansonならではの質感あふれるエンボス紙。
油絵キャンバス風エンボス加工の用紙に、家庭用インクジェットプリンタ
でどこかの絵画素材を印刷し額装すると、まるで本物の油絵のような
雰囲気になります。ツヤツヤピカピカの写真印画紙風インクジェット用紙
がはんらんするなか、この絵画タッチ用紙は個性的な注目製品でしょう。

9.カール事務器

こなれた展示ブースで見やすかったです。小型の用紙裁断機のデモが
目立ちました。

昨年発表されていた電動2穴パンチの売れ行きはどうなのでしょうか。
今回はひっそりと置かれていました。
カタチはキレイながら樹脂の素材感、ツヤ具合、ボディの工作精度など
今後リファインして欲しいです。机の上に置く以上、細部の仕上げが
気になるからです。小改良に期待。

10.海外関連

SARSの影響でアジア関連のブースは出展自粛するところがあったようです。
欧州のブースがいくつか出ていました。今回、商談の成果はいかが?

すでに日本の代理店が付いており、市場も限られているので出展して
いないのだとは思いますが、海外の有名筆記具メーカーのブースが
ISOTに並んだら楽しいのになあと思うのは、私がシロウトだからでしょうか。

11.会場全体

会場の中央付近に休憩席が充分なスペースとともに設けられ、良かったです。
ISOTはじつはとても歩く距離が長く、歩き慣れている私でもヘロヘロに
疲れます。会場の端ではなく、このように中央部にイスがあれば、会場
内を移動する動線上となるので助かります。

12.簡単なまとめ

ギフトショーの「浅草・仲見世的」盛り上がりに対して、
ISOTはビジネスライクな、ちょっとクールな感じがそれはそれで好きです。
でも(業界的には厳しいと言われるなか)こと個人ユーザーについて言えば
雑貨という範疇もふくめて、文房具の人気と期待は以前にも増して高まって
いると思います。
それはモノ系雑誌の長年にわたる文房具特集の掲載、最近の壮年(?)向け
こだわり雑誌の万年筆特集、インテリア雑誌の文房具記事などによる「下地」
と、おしゃれな雑貨店への人気度から容易にうかがい知ることができます。

私はこのレポートの冒頭で「だれのためのISOT?」と述べましたが、
もしいままでそういった何か前提があったのならば、それを乗り越えて
もっとエンドユーザーの集客を期待するISOTが有ってもよいのではないか
と思いました。
(いつもながら無責任な意見で申し訳ないのですけれど。)

たとえば、ブースの最大床面積に上限を設定して、小さいコマのブース
を沢山並べる設定にし、最近参加の少ない、だけど個人客には期待度の高い
輸入筆記具メーカーすべてのブースを招くとか、展示会場とは別の部屋で
即売会場を設けるとか。

一般公開となった最終日に子連れの訪問者がとても多く、私はびっくり
しました。来場者には子連れで行きたいと思わせる何かをISOTに感じ
同時に期待を持っているのではないでしょうか。

もちろん出展側にはプロのための展示会であって欲しいと思うかたも
多いと思います。でも一方で、メーカーが文房具の動向や反応を
つかむのに、流通の方だけではなくエンドユーザーの表情を見たい場合も
あるかもしれません。

一般公開日に対していままで以上に重点を置き、より多くの出展をめざす
のも新生ISOTへの、ひとつのブレイクスルーではないでしょうか。

(本人、あまり考えずに書いていますので、ヒント程度に読んでくださいね。)