2005年11月10日
■ 筆記具篇です
「文房具を楽しく使う(筆記具篇)」発売が開始されました。
「文房具を楽しく使う(筆記具篇)」

和田哲哉 / 早川書房 ISBN4-15-208622-X C0034
¥1,600+税

お待たせいたしました、ようやく上梓に至りました。お待ちいただいた皆さん、そして出版社の皆さんにあらためて御礼申し上げます。こうしてみますと、二冊も出るというのは凄いことなのだと改めて感じております。なにしろ一冊目について皆さんからご評価をいただいた証なのですから。(感謝)

ただ、この筆記具篇は前作(ノート・手帳篇)とはめざすところが少し違います。じっさいすでにいくつかのコメントをいただいており、前回よりも冷静な内容とのお声が多いです。じつはこのあたりは意図したところでして、前作での一部反省に立ってバランスを調整しました。

ちょうど前作が出た頃から日本では一部で文具ブーム的状況になり、表向き幸せのようですが、内容が伴っているかと申しますと決してそうではなく、このまま行くとまた不毛な様相になる気配が見えてまいりました。その事を察知している見識ある文具ファンの皆さんも多いことかと思います。

前作では楽しいというキーワードを掲げその雰囲気づくりに留意しました。もちろん基礎知識の解説も充分に織り込んだつもりでしたが、楽しいの部分が印象に残ってしまったのか、大切なバックグランドは置き去りで楽しいだけが独り歩きしてゆく気がしてずっと違和感を感じております。

新作ではページの前半約6割を充ててハードウェアの解説を行っております。本当に筆記具が好きな人、筆記具の事がわかってしまう方々はいったいどこまで製品を読み込んでいるのかを自分なりにイメージしてこの部分に著してみました。「買いました〜楽しかったです。」レベルで話が終わってしまうのではない、「わかる筆記具ファン」が意識している「その先」を記すことは、筆記具ファンの皆さんの地位保全になるのではとも考えたのです。メーカーや流通にそんな筆記具ファンの存在をお伝えしたい気持ちもあります。(ご紹介する筆記具の価格にだいたいの上限設定があった事・初心者を意識した本にする事・そして紙面の都合から、一部においては書き足らなかったのも事実。)

また前半のハードウェア解説が有るからこそ、後半の抽象的な話題にも皆さんの理解度が高まるのではとの期待もあります。「楽しく使う」を雰囲気だけで語ってはいけないというのが新作でのココロです。

今回もメーカーとのタイアップはせず、カタログ的情報は前作よりも減らしました。そしてハードウェア解説ではベーシックな知識、当たり前の話を大切にしました。何をいまさらと言われる事もあえて馬鹿になって書いています。それは情報過多、終わり無きクチコミぐるぐるの今の文具界において必要な事かもしれません。先日の「ラミーのすべて」が日本のラミーのスタートラインを引いてくださったように、本書も身近な筆記具の新しいスタートラインになれば良いなと勝手に考えています。