2002年7月25日
■ 手帳システム

むかし流行った「システム手帳」って誰が名付けたのでしょう?
上手なキーワードですね。

その言葉だけで、いままでの手帳とは違う、可能性を秘めたものを連想させる力がありました。
でもそんな巧いキーワードであっても、言葉をどんどん「消費」し、陳腐化させてしまう
ここ日本においてはもはや過去の言葉。もったいない気もします。

ところで、このシステム手帳の「システム」が当時指したものは、おそらく多くは手帳の中で
クローズしていたのではないかと思います。
けれども、今や手帳やノート、あるいはコンピューター類も含め多くのツールを連携させて
活用している人にとっては手帳の外側に大きなシステムが存在しており、ここに時間や空間そして
ネットワークの要素を加えると、たったひとりの世界でも重層的・有機的な構成が出来上がって
いることに気づくはずです。

あまり視野を広げるとまとまらないのでもういちど手帳にフォーカスしますが、前述の
バックグラウンドを考えたとき、「システム手帳」は過去の言葉でも、前後をひっくりかえして
「手帳システム」というキーワードに仕立ててみると、なにか新しい発見がありそうです。

■ 構成の視覚化

こんなに長い序文を書かなければいけないのはなぜかと言いますと、これからさらにやっかいな
説明をしてみたいからで(笑)、すみません、気合いを入れて読み進んでください!

日本を席巻した「システム手帳ブーム」、その後のパソコンとネットワーキングの発達、そして
近年のパームOS機器の人気と、私たちはいくつもの大きな波を受けてきました。
これらの経験から、バインダー手帳の実体感とパソコンの持つ大量データの可搬性、パームOS
機器の持つ即時性、ひごろ大量のデータをこなしている人なら、これらをバランス良く活用
させてゆきたいと思っていることでしょう。

このあたりのモロモロをさきに述べた手帳システムという言葉でくくり、ご自分の手帳システム
の現状を認識してみることを私はおすすめします。現状をどのように捉えるか、それは簡単。
どんな表現方法でもよいので、何か絵にしてみることです。

この、モノゴトの構成を視覚化させることはとても重要なことと私は考えます。他人に或る
状況を説明するのに有用な手段ですし、自分自身のためにしても視覚化させることによって
いままで気づかなかった良さ、あるいは盲点を認識することが期待できます。

手帳システムではありませんが、まずはアーティスト「貴堂 直」様のサイトに掲載され
ている、氏のアートワーク「STUDIO CUBICLE」全体構成を視覚化したものをご参照ください。

貴堂様はこれを描くことで、ブラウズする人達に「STUDIO CUBICLE」の活動を一瞬で伝え
ることができ、いっぽう貴堂様ご自身で状況を自己評価されていることと想像されます。

構成の視覚化:この手法は手帳システムにすぐ応用可能なアイディアと私は直感しました。

■ 自分のために描いてみる

貴堂様の手法に倣いながら、自分の手帳システムの構成を絵にしてみましょう。何回書き直して
もかまいません。現状を描いても良いし、近い将来のカタチをイメージしてもO.K.でしょう。

いろいろ表現方法があるかと思います。私はいちばんアクティブなツールを中心に据えました。
その周囲に出入りする情報、記録する対象、用途をコメントで書き添えます。私は4度描き直し
このようなカタチになってきました。

メインはMacintosh、QUOVADISダイアリー、TRIMバインダー。
フィールドでのVisor、RHODIA#11、MOLESKINE MEMO-POCKETS。
アイディアと最新のToDoを捕捉するRHODIA#8とClairefontaineのINDEX NOTE。
仕事(営業)をおさえる ERGOGRIPバインダーとClairefontaineのステノ。

じっさいにはこのほかにいくつかのノート、カード、ファイル類が控えており、まあ、絵に
描いてみるだけの複雑な(=おはずかしい)状況になっていることがわかります。

いかがでしょう? このようなグラフィックスを毎年、あるいは半年ごとに描いて自分の
手帳システムを見直してみるのです。作ったグラフィックスは捨てないほうが良いでしょう。
その変遷をあとでふり返るのも楽しいものです。

■ フィードバック

この絵で私の手帳システムにフィードバックをかけてみましょう。
私にとって最大の関心事はQUOVADISとTRIMバインダー、その関わり具合の確認でした。
いつも1年のなかの自分を支えてくれるQUOVADISですが、年度を超えた記録が発生した
場合にはQUOVADISからリフィル、またはファイルメーカーのレコードに移行されてゆきます。

視覚化された手帳システムを見ると、QUOVADISからの他に、フィールド/プライベート
/ビジネスの、各ループからのデータの集積が今後も続くと予想されます。しかし、現状
では集積されたデータは保存するだけでなく、携行しなければいけないものも多いのです。
リフィルを携行するバインダーは必須です。

リフィルはミニ6穴を常用しています。リフィル化された記録を受け止めるバインダーは
保存と携行の境目に存在するもので、充分な保存量を確保しながら携行に耐える良いもの
が求められておりました。この微妙な私の要望にTRIMのバインダー(ITシリーズ)は
美しく応えてくれたのです。

■ コンセプト

TRIMバインダーの良さ、それはなにより作りの良さにあるのですが、店頭ではわかりづらい
すなわち社長にお会いしなければわからない、もうひとつのポイントがありました。
製品シリーズに明確なコンセプトが有るということです。

2002年春、私は社長様にお会いしてITシリーズについてアレコレ質問をしていました。
私の興味の中心は「作り込み」。質問の内容もそこに集中しました。ところが社長のひとこと

「これ、ミニ6穴なのにバインダーのリング径がとても大きい。」
「ほら、ね。、、、これ、TRIMが最初です。」

ミニ6穴だから小さくスリムにと思いがちですが、そもそも紙面の小さいリフィルが
小さいリングに綴じられていたら、データの総量が限られてしまう。当然データ量の増減
にも柔軟に対応できない。小さく便利なようで、じつは自由度をせばめてしまう面もある
わけですね。データ量が多くなる私のような者がミニ6穴を使いたい場合、リング径の
大きさが解決してくれるわけです。

もちろんTRIMのバインダーのすべてが大きいリングを装備しているわけではありません。
これはITシリーズ・ミニ6穴モデルの特徴。TRIMの他のバインダーには、スリムな美しさを
追究し、リフィルを詰め込むと明らかに格好悪くなるようになる、スリムにつかわざるをえない
作りのモデルもあったりして面白いのです。
品質が良いのはあたりまえ、革のバリエーションも豊富、さらに「その次の部分」に明確な
コンセプトが織り込まれているところがTRIMの凄さなのではと思いました。

ミニ6穴、余裕のリング径、作り込みの良さ:この3つの要素が私の希望とまったく一致し
ました。TRIM ITシリーズ・ミニ6穴に「それ」がありました。

■ フィールドワーク

文房具ファンは細かくてわがままなものです。このわがままを満足させるために私は、自分に
相応しい製品を探し続け、この行為を体裁良く「フィールドワーク」と呼んでおります。

今回このページを見直しますと、手帳システムの視覚化などとマクロから始まって、最終的に
は革バインダーの選択へと小さくまとめたように思われるかもしれませんが、私の思うその
「フィールドワーク」とは決して単純な文房具屋さんめぐりではなく、目的を明確にするための
準備段階から始まっていることをお伝えしてみたかったのです。

もちろんこれは趣味としてやっていることですから、興味の無い方にとっては全く非効率な
アプローチかもしれません。けれどもプロでもシロウトでも研究とはそういうもので、自己に
明確な目的とルールを決めて行うゆえに、課題を達成した時の楽しみが有るというものです。
文房具にはそういった楽しみを味わうには充分深く、そこそこ知的な世界です。

あちこち寄り道をしていますが、さて、次回はいよいよTRIMのハードウェアに近づいてみたい
と思います。

第1版 2002年07月25日 作成
第2版 2002年07月28日 修正