2003年7月20日
■ トンボ鉛筆の海外向け展開

文房具の展示会「ISOT」(国際 文具・紙製品展 )。
その2003年版レポートでもご紹介しました、トンボ鉛筆の欧州向け展開について
ISOT会場にて株式会社トンボ鉛筆のかたからご説明をいただきました。

欧州向けのカタログ(展示会専用の資料)を拝読すると、私がここ数年考えていた
「日本の高価格帯筆記具をもっと海外に」ということをトンボ鉛筆はすでに
精力的に実践してきたことがわかります。

トンボと聞いてまず最初に思い浮かぶのが高品質な鉛筆と消しゴム、また最近では
当サイトでもご紹介した使いやすい「テープのり」や修正テープのなど製品群です。

私はトンボ鉛筆の筆記具が海外で数多くのデザイン・アワードを受賞していたことを
知らなかったので、このあたり勉強不足なのだなあと思いました。
逆にトンボ鉛筆が、海外での最近の活動を日本では積極的に知らせていなかったのも
事実のようで、文房具への嗜好が多様化・厚みを持ってきた日本の動向を見据えてか
今年からは国内へのプレゼンテーションも重視する動きがあるとのお話でした。

そんなトンボ鉛筆の近況を私なりに解釈し、以下にご紹介させていただきたいと思います。

■ TOMBOW 「 デザイン・コレクション 」

もうかなり前のことになりますが、トンボ鉛筆でZOOMという筆記具のシリーズがあったことを
おぼえておりますでしょうか。ずんぐり卵形のローラーボール(EGG COLLECTION)
ものすごく細身の筆記具(ZOOM707)などです。

日本では目にする機会がほとんど無くなってしまったこれらの製品は、じつは欧州で
名の通ったデザイン・アワードである「red dot」(EGG COLLECTION & ZOOM707)や、
ラミー・スクリブルも受賞している「DESIGN PLUS」(ZOOM 707) を獲得していたのです。

ほかにもハマキ形でしっとりと落ち着いた雰囲気の「HAVANA」や、柔らかな曲線が美しい
OBJECT」シリーズなど、いずれの製品も高い評価を得ているとのことです。これらの海外
向け筆記具ラインをトンボ鉛筆のカタログでは「デザイン・コレクション」と呼んでいます。

 

■ LAMY か TOMBOW か

そのようななかで1999年、こんなトピックスがあったそうです。
ドイツの業界誌「Scriptum」(厳格な評価で有名なところ)で、LAMYの「アクセント」と
TOMBOWの「ZOOM 980」との比較レポートが掲載されたのです。
このレポート作成について編集部とメーカーとの事前調整は一切無しだったとのこと。

副題は「未来をめぐる二者間の競り合い」

このレポートの中で、ラミーアクセントの交換式グリップのアイディアを評価する一方、筆記具
としてのバランス、デザインについては「ZOOM 980」に高い点が与えられていました。
そう、ドイツでのトンボ鉛筆はラミーと同じくらいに期待される高級筆記具メーカーなのです。
冒頭でご案内のとおり、国内でもこれらラインが少しずつ展開されるかもしれません。

■ ZOOM2000

さて、TOMBOWの海外向け筆記具ライン「デザイン・コレクション」のなかに、
イメージリーダー的なモデルが存在していました。それがこの「ZOOM2000」です。

" ZOOM2000 "

BALLPOINT PEN

TOMBOW / JAPAN

伸びやかなフォルムが美しい、「 ZOOM2000 ボールペン 」
オールアルミ&オール削り出し。手の込んだ作りのボディは、切削の際についた回転方向の微細なヘアーライン
のおかげで柔らかな光の陰影を作り出します。アルミなのにふわりとした透明感があって、145mmの全長を
あまり感じさせません。(この感覚をお伝えしたく、光の角度と背景に腐心したのですが、いかがでしょう。)
そして、ZOOM2000 一番のポイントは胴軸中央部のシャープなカッティングです。これがすごい!(後述)
写真上がボールペン
下がローラーボール。

ならべると似たプロポーション。
でもローラーボールのキャップ
をはずすと、こんな感じに。

「ZOOM2000」は、トンボ鉛筆が西暦2000年を記念して作ったモデルです。
欧州では102ユーロ前後、米国では100ドルで発売され、かなり高額のもの。

ボールペンとローラーボールがあります。ボールペンは胴軸後端の部分を回転させてペン先を
繰り出す方式。ローラーボールはキャップ式です。キャップを閉じた状態ではボールペンと似た
外観(写真上)ですが、キャップを外した時には胴軸のふくらんだ部分がボールペンのそれ
よりもずっと(25mm)低い位置に来て、同じ銘柄のペンでありながら筆記時に手にした感覚
はそれぞれがまったく違ったものになります。

ZOOM2000の胴軸中央に浅く鋭く掘り込まれた溝。
この溝の切削にはたいへん高度な加工精度が要求され
指定工場における職人の技と手間のかかる作業。
なにより溝の開始点を合わせるだけでも難しいとのこと。
この溝が軸の周囲にぐるり6組・合計12本もあり
全体の柔らかな雰囲気に「エッジ」を効かせています。
このようにさりげなく手間を投入するところが、
イメージリーダーモデルたる ZOOM2000 の「静かなる贅沢」なのかな?

「道具」からはすこし距離を置き、どちらかというとオブジェの雰囲気。
完ぺき主義なプロポーションではなく、どことなく「はかない」部分も見え隠れする本品。
でも、両手でペンの両端をつかみクルクルと回して、胴軸に刻まれた精密な溝が次々に輝く様子を
みつめると、オリジナリティを大切にしたトンボ鉛筆の取り組みにうれしさを感じるのであります。

このZOOM2000は日本では以前、試験的に限られた数量が販売されました。

■ これからの活躍にも期待

製品としては今回、トンボ鉛筆のデザイン・コレクションの代表として「ZOOM2000」の
ご紹介にとどまりましたが、前述の数々のモデルも個性的なのでお伝えしたい点が沢山あり
さらに新製品のニュースも届いております。また、トンボ鉛筆は製品の精度に関する取り組み
がたいへん厳格で、既発表製品でも見えないところに細かい改良がほどこされているとのこと。

このあたり機会を見て、また皆様にご報告をさせていただきたいと思います。

欧米での、そして日本での活躍に期待。 トンボはもう、「TOMBOW」に!

(株式会社トンボ鉛筆様、ステーショナリープログラムへのお声がけありがとうございました。)

 

TOMBOWのデザインコレクションは2003年11月より、日本全国での販売がスタートしました。