2003年8月12日
■ Moon Phase

ちょっと出かける支度をしていると、あれ? まる・まる・マル !

ぐうぜん、3つともマルを強調したデザインでした。

(腕時計がマルなのは当たり前のことですが。)

これらのマルはそれぞれが違うストーリーを持っている
と、私は考えました。

以前にもお話しましたが、SWATCHは新しいことに
取り組んでいると見せて、造形の基本はスイス腕時計の
伝統的な様式に忠実であるように思えます。
特に風防の3次元形状は決して冒険をしておらず、その
おかげでディテールがいくら遊んでいても全体として
破綻なく安心して観賞できる製品になっています。

APPLE・iPodのサークルは指でクルクルなぞると曲リストを快適にサーチできる、発明的な
インターフェイスが「機能付き象徴」となり、この巨大なマルも意味あるものにしています。
写真の初期型iPodはプロトタイプ的で、角ばったボディなどユーザーの使い勝手は二の次。
日本のメーカーなら絶対にやらないであろうカタチを与えたことにより、iPodはデザイン
上の大きな衝撃を世界に与え、ファーストモデルとしての役割を十二分に果たしました。

 

Vodafone端末・JT-010の大マル、これはストレートに言えば遊びとしてのカタチ。
その存在に必然性は無さそうです。けれどもサブディスプレイ以外の、あと3つのマル
(カメラレンズ・カメラ用照明・ステータス表示用LED)を含め、合計4つのマルの
セットで見ると、なにかが浮かび上がってくるような気がします。

これらの中で唯一、四角くできないのはカメラのレンズ。携帯のボディに異質なレンズを
配置しなければならない不条理を、他のパーツも大小のマルでくくり、全体として
グラフィック的な楽しさにすりかえてしまったところに、デザイナーの腕を感じます。
さらに細部を見ますと、どのマルも円周部に造形上のきめ細やかな工夫が凝らされて
いることに気づきます。

私はこのJT-010のマル群を日本庭園に見立てて解釈しました。
レンズ部の突出したマルは富士の山、サブディスプレイと照明は大小の池、LEDはさながら
庭に浮かび上がるお月さまかな。
デザイナーは日本人なのか?気になってきました。
ちなみにVodafoneのロゴも円形なんだよなあ、おお、5個目のマルを発見だ。

 

プロダクトデザインに円形のモジュールを取り込むのって、けっこう難しいと思います。
円形はそれだけで存在感があり、人の目を引きつけてしまうからです。
とくに四角いボディの上に配置するのには、高度なデザイン上の配慮が必要でしょう。
よくカメラのレンズ周囲に大きな円形の縁取りをする製品を見かけますが、カメラの品を
壊してしまうものが多く、あまり成功例を見かけません。
マルを組み込むときは慎重に。

、、、きょうはスイス、アメリカ、そして日本のマルを味わう、満月の夜でした。