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ミミック・通販10周年、10のエピソード。

  
1.通販十周年

銀座の筆記具専門店「五十音」が創案した、キャップ付き鉛筆補助軸「ミミック」。ミミックを「店頭購入に劣らないサポート」を心がけつつ、全国の皆様にお届けできるようにと信頼文具舗で取り扱いを開始させて頂いたのが2008年3月24日。早いもので今年の3月、十周年になります。

万年筆風鉛筆補助軸「五十音・ミミック」
  
  
2.ミミックとの出会い

ミミックを取り扱う以前の信頼文具舗は、ロットリングやラミー、ロディアやモールスキンノート(→当時の呼称)など海外ブランドの文房具をメインにしていたので、最初に五十音さんからミミックのご相談を受けた時には大きな迷いがありました。ミミックは国内の万年筆職人さんが轆轤(ろくろ)という伝統的な万年筆用の工作機械を用いて1本1本軸を削り出す、まさにクラフト的手法で生み出されている製品です。私個人としては大量に製造されるプロダクツ(=工業製品)に興味があったので、クラフト系の製品を一歩引いて見てしまうところがありました。それゆえ、職人さんの手作りという部分に躊躇したのです。

しかし、五十音さんにお声掛けを頂き初めてミミックを手にした瞬間、これほど手に馴染む筆記具があっただろうかと、決して大げさではなく驚愕(きょうがく)したのです。なによりアセチロイド独特の触感の良さ。一般名称:アセテート樹脂。植物由来の樹脂素材という予備知識を知らずとも、この手指に馴染む感じは通常のプラスチックやアクリルとは違うものでした。ミミックの、飾りの無い直線的なシェイプは「鉛筆を内包するもの」として理にかなったもので、鉛筆と同様、シンプルな外観ゆえの使いやすさと飽きの来ないスタイルの表現になっています。ペンクリップが無いため、鉛筆の芯先を無意識のうちに最適な位置になるよう持ち替えても問題ありません。また本来の鉛筆補助軸の目的をスポイルしない、充分な胴軸の長さも大切なポイントです。
  
  
2.キャップ付き補助軸=「ミミック」

ミミックの外観上最大の特徴は、鉛筆補助軸でありながら備わっているペンキャップです。五十音さんは当初、銘木を本体軸に備えた鉛筆補助軸をいち早く導入されたお店でもありました。しかしまもなくに他所から類似品が出回ったため、銘木系補助軸の開発も販売も中止。さらなるオリジナリティーのあるモデルを模索することとなります。その後数多くの検討を経て生まれたのが、芯先を保護し鉛筆の持ち歩きにも対応できる、軸と同素材のペンキャップを備える補助軸の構成でした。ミミックの意味は「擬態(ぎたい)」。キャップをしている時はまるで万年筆のように上質なスタイル。キャップを外すと「普通に使いやすい鉛筆補助軸」が現れる趣向です。

ミミックの新旧比較
初代ミミックと最新のミミック
  
  
4.ミミックを送り出したひとたち

ミミックの誕生には「人」との関わりを外すわけにはゆきません。五十音さんは著名な万年筆専門家であるA氏に「万年筆クラスの質感を備えた鉛筆補助軸」実現への相談をします。その要望に応えてA氏が紹介してくださったのは、この人こそレジェンドとお呼びするにふさわしい大阪の万年筆職人、B氏(故人)でした。B氏は五十音さんが描いたキャップ付き補助軸の図面をもとに、B氏の万年筆に採用しているアセチロイドから削り出しをしてミミックの最初のモデルを完成させました。この時のアセチロイドの色柄は、現在もミミックのクラシックモデルとして人気の「ペンギン」に相当します。
  
  
5.信頼文具舗での取り扱い開始

前述のとおり2008年からミミックの通販がスタートします。信頼文具舗は1999年のオープン以来培ってきた商品の検品手順とお客様へのサポート態勢をもってミミックを全国の皆様にお届けしました。また、五十音と信頼文具舗のどちらでミミックをお買い求めになられても、お客様は相互に等しい製品サポートが受けられるようなっています。2008年の12月からはアセチロイドのバリエーション、鮮やかな赤色が美しい「ナンテン」もラインアップに加わり、ペンギンとナンテンのセットは好評を博しました。
  
  
6.クラフトからプロダクツへ

信頼文具舗は五十音さんのオリジナルプランとB氏のノウハウを受け継ぎ、2009年よりミミックの開発にも参加しています。ミミックは一見すると変化が無いように思われますが、私たちの手によって常に改良が施されています。現在販売されているモデルは、オリジナルカラーの「ペンギン」であっても5世代目になっています。
五十音さんがプランニングを行ない、信頼文具舗の母体である和田電機(株)の経験を背景に製作図面を管理し、関係する業者さん方のお力添えを頂きながら、ミミックに絶えず細かな見直しを実施。製品仕様から製造過程まで、これまでに40件近いブラッシュアップが行われました。
とくに大きな変化となったのは鉛筆を固定する部品「チャック」の内製化です。国内の金属加工のエキスパートさんのご協力のもと、チャックの先端からエンド部まで一体化された、高精度かつ高品質なパーツを五十音ブランドで独自に開発しました。ご参考まで、チャック周辺のパーツは初期型と比較して実に16倍のコストが投入されています。チャックの更新に伴いブラス(真鍮)製となったグリップ部にレーザーで刻印された”Ginza Gojuon”の文字とペンギンのロゴは、このオリジナルパーツの品質の証です。鉛筆補助軸の心臓部とも言えるチャックを内製化したことにより、ミミックはクラフト筆記具が持つ手作りの暖かさを備えつつ、プロダクト(工業製品)としての品質をも得ることが出来たのです。

ミミックの改善箇所
  
  
7.人から人へ

ミミックに込められたB氏のご功績は、国内大手メーカーに筆記具を供給している筆記具製造専門会社に委ねられ、さらに現在は新たな万年筆職人さんに引き継がれています。偶然にもその職人さんはこれまでB氏とお仕事での繋がりがあり、ミミックが取り持つ不思議なご縁を感じずにはいられません。
現在の職人さんはミミックに新たな風を呼んでくださいました。そのかたの高い工作技術と新しい手法への取り組みが、このシンプルな製品の洗練度をさらに高め、数々の魅力的なモデルへの展開も実現しています。
  
  
8.筆記種のバリエーション

五十音のオーナー、宇井野京子さんは小売店の店主であるとともにボールペンとペンシルのエキスパートです。(ここで言うペンシルとは通常の木軸の鉛筆だけではなく、古来の繰り出し式ペンシルから現代のシャープペンシルまでをも含めます)ご著書「ボールペンとえんぴつのこと(2006年・木楽舎)」に目を通しますと、ボールペンとペンシルについての、機能と世界観の両方を包含した氏の深い見識を伺い知ることが出来ます。
面白いことに、本来は鉛筆補助軸であるミミックに宇井野さんが考案したオプションパーツを装着すると、4cタイプの替芯を使ったボールペンに変化します。真鍮製のオプションパーツが適度な重厚感を生み、他の多くのボールペンに負けないグレードの高い筆記具に仕上がっていることにも驚きます。
余談ですが五十音はオープン当初からオリジナルの真鍮ボールペンをラインアップしています。ここ十数年、メッキ等の表面加工をしていない真鍮素材が文房具や筆記具に採用される例が増えていますが、その源流のひとつに五十音の取り組みがあることは間違えありません。
またドイツ製のローラーボール(水性ボールペン)替芯にひと工夫をしてミミックで使うこともできます。このローラーボールには万年筆とほぼ同等のインクが充填されていて、万年筆のあざやかなブルーをミミックの快適な重量バランスで使うことが実現します。
なお、これらバリエーションの展開があっても筆記具としての質感が低下しないのは、ミミックというベース部分が完成していることにほかなりません。

オプションパーツJSを装着したミミック
※写真のミミックでは別売の「オプションパーツJS(クロームメッキ)」と
※「ミミック純正グリップ(ブラス)」が装着されています。
  
  
9.トライアル

現在の職人さんにご協力をいただいたなかでも近年の面白いトライアルは「ヴィニャス万年筆」の製作でした。ミミックは今後も鉛筆補助軸の道を歩み続けますが、「上質な鉛筆補助軸」について世の中の理解はなかなか得られません。私たちはミミックを「毎日使えて永く愛せる普通の道具」として供給しており、その実現のためには決して高額なものではないと考えています。しかしいまだにミミックのことを「補助軸界の高級車」と評されるかたがおられるのも事実です。
いっぽう、このところの万年筆ブームによって、高額な万年筆が数多く流通しております。それならば「ミミックの素材クラスで試しに万年筆を作ってみよう」という着想が2015年の「ヴィニャス万年筆」の実現となりました。このトライアルを通じ、すでに市場価格が確立している万年筆と対比することで、いかにミミックがお手ごろな製品であるかをご理解頂きたかったのです。
なお、ヴィニャス万年筆はそこそこのお値段ではありましたが、すでにヴィニャス万年筆をお買い上げのお客様に対し、2018年にペン芯をプラスチックからエボナイト素材へ更新する大胆なアップグレードサービスを実施。ヴィニャスの完成度を高めました。
  
  
10.ぜひ最新モデルを

以上、「じつは擬態したまま、しっかりと進化し続けていた」という、ミミック初公開エピソードのいくつかをご紹介させて頂きました。
私としましては、すでにミミックをお使いの皆様にこそ、最新のミミックを手にして頂きたいと願っております。とは言うものの、私も初代ミミックを壊れずに使っているユーザーのひとりです。コレクションをお勧めするわけではありませんが、お使いのペンギンの横に最新のペンギンを並べ、これまで両モデルに関わった多くの方々の想いと成果を楽しんで頂けましたらと思っております。
ご参考まで、チャックの新旧の違いはグリップのローレット(ギザギザ)加工の有無でお確かめ頂けます。グリップがアルミ製でローレット加工のあるものが初期型チャック装着品。チャックは2013年の夏ごろに切り替わっています。またペンギンについては、2015年頃から軸のシェイプや軸表面の平滑度の改善が行われています。お手元のミミックがどの世代のものか分からない場合は、お写真を撮影されて信頼文具舗にお送り頂ければ、可能な範囲でご対応をいたします。
  
→ 五十音
→ 信頼文具舗
 
  
銀座・五十音 入口

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